cineca

Instagram Twitter Facebook
online store

May breeze jelly

五月の風のゼリー
NOT FAR 02
第一特集|立原道造
菓子制作・寄稿

-

立原道造が最期に残した
『五月の風をゼリーにして 持ってきてください』
という言葉に寄せて
菓子の創案制作と
立原道造についての詩文
「詩と菓子はよく似ている。」を寄稿しました

-


NOT FAR 02に収録|2019.9

→五月の風のゼリーは2022.5に販売開始予定
漂う命

身体が健やかにいかないと、ゼリーばかりを食べたい。
固体はあきらかに苦しいが、
水のような液体もなかなかにしんどいので、
固体でも液体でもないゼリーのような食べものがちょうどいい。

ゼリーの融点は人の体温ほどだから、
口の中に入れてすぐにすぅっと溶ける心地良さが身体を助けてくれる。

たとえば、固体を死、液体を生と見てみると、
固体と液体の中間者であるゼリーは、
死と生の中間者とも言えるかもしれない。

まぎれもなく元気なときに死は遠くにいるが、
空(くう)を仰ぐしかない時間がやってくると死が近くなる。
そうして、死も生の一部であると知らされる。

本来生きるということは、そんな風に、
死でも生でもない中間者として漂うことのようにも思えてくる。

道造の詩が、死に到達しようとしてみたり、
生から解き放たれたいと願うように在ることは、
ゼリーという存在にほどなく等しい様で。

五月のそよ風のゼリーを最期に求めた詩人は、
自己救済となる言葉を
命の数よりもたくさん知っていたはずだ。

-

寄稿文「詩と菓子はよく似ている。」
から一部抜粋
top